昔のタイの美しい暮らしにふれる!バンコク博物館
No. 466
最近のバンコクといえば、金色に輝く寺院や賑やかなナイトマーケットに加え、高層ビルが立ち並ぶ大都会の姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。
今や、エキサイティングな街として名前をはすバンコクの街中に、まるでタイムスリップしたかのような静寂と歴史を讃える場所があります。
それが「Bangkokian Museum(バンコク博物館)」です。
この隠れた名所を知るきっかけとなったのは、タイ人の友人からのお誘いでした。
「タイの昔の暮らしがとてもよくわかる素晴らしい博物館があるんだよ。訪れる人も少なくて、本当に静かな場所なんだ」と微笑む友人とともに、向かったのでした。
BTSサパーンタクシン駅からジャルンクルン通りを進み、ある路地を曲がります。
そこには都会的な空気とは一線を画す、豊かな緑に包まれた美しい一角が。木々の青々とした葉っぱが作るガーデンの奥に気品あふれる木造邸宅がひっそりと佇んでいます。

到着してまず驚いたのは、これほど手入れの行き届いた歴史的な建造物でありながら、入場料が無料であること。敷地の中に歩みを進めると、温かな笑顔を浮かべたボランティアスタッフの方が、「写真は自由にとって大丈夫ですよ」と声をかけてくれます。このアトホームな空気感。心和みます。

このミュージアムは20世紀半ばのバンコクにおける中流家庭のリアルな暮らしぶりを今に伝えるスポットとして、2004年にオープン。
ここは元所有者である女性とそのご家族が実際に生活していた敷地と邸宅であり、彼女が自らの思い出と歴史を未来に遺すために寄付し、公開されました。
敷地内には、それぞれ異なる歴史と役割を持った美しい木造建築が3棟建ち並んでいます。
1棟目のメインハウスは、元々のオーナーファミリーが日々を過ごした住まい。窓のデザインに熱帯の強い陽射しを最小限にとどめる工夫を感じます。

木の温もりが伝わる床板と高調な天井、そしてヨーロッパの洋式とタイの伝統が見事に融合したアンティークな調度品たちが温かく迎えてくれます。ダイニングテーブルの脇にはピアノが置かれ、どことなくインテリジェンス漂う空間。

重厚な書物が並ぶ木製のキャビネットや風合いのあるソファ、エレガントなドレッサーなど、どの家具や装飾品を見てもその美しさに息を呑みます。こちらのエメラルドグリーンのグラスで、どんな飲み物を楽しんだのでしょうか。


その一つひとつの品に家族の愛着や生活の温もりが宿をり、長い時代を経ても、大切に使い続けられてきたことがひしひしと伝わってきます。

中でも印象的だったのが、トイレの展示でした。

当時の洋風トイレや洗面施設が非常に綺麗な状態で保存されており、近代化を迎えたタイの丁寧で衛生的な暮らしの美学を感じ取ることができました。
続いて隣に建つ2棟目の建物へ。
ここはかつて住居兼診察室として使われていた空間でした。


木造のレトロな部屋に並ぶガラス瓶や当時の日記は、どこかノスタルジックでミステリアスな雰囲気。かつてこの場所で多くの人々の手当てが行われいたのでしょう。
この写真は建物の2階から撮影したものです。

目の前の東屋がボランティアの方たちの休憩所、その向こうが前述した1棟目の建物。左側が民具を展示している棟となっています。
そして最後に訪れた3棟目は、タイの伝統的な生活様式や民具がずらりと並ぶ展示館となっています。
ここには、かつてのタイの人々が日々の営みの中で使っていた農具や調理器具、織物、暮らしの小道具などが豊富に集められています。


友人曰く「質の高いものが沢山使われていることから、上流の家庭だということがよくわかる」とのこと。
気候風土に合わせた知恵と工夫が詰まった民具の数々は、タイという国の文化の深さと当時のタイ人のイキイキとした暮らしの営みを力強く語りかけてくれました。
急速な経済発展を遂げ、高層ビル群や巨大なショッピングモールが立ち並ぶ大都会となった現在のバンコク。しかし、目まぐるしく変化する街の片隅で、このような古き良き時代の住まいを、ここに暮らした人たちの愛用品を、よくぞ遺してくれたものだと、胸が熱くなりました。


この博物館は都会の喧騒で疲れた心を優しくほぐしてくれるはずです。
バンコクを訪れたら、この美しい邸宅で営まれていた暮らしと歴史にふれてみませんか。

<ご案内>
Bangkokian Museum
273 Saphan Yao Alley, Bangkok 10500 Thailand