古刹の情緒を愉しむ、東京の「小京都」烏山寺町へ
No. 347
秋に旅するなら、古都に惹かれるという方もいらっしゃるかもしれません。
古都の代表的な旅先として挙げられるのが京都。
紅葉と古刹の組み合わせは日本の美に浸れ、感性を豊かにしてくれる風情が漂っています。
今回は東京の小京都と言われる烏山寺町へ出かけてみました。
京王線「千歳烏山」駅から徒歩約15分。住宅街から中央自動車道を抜けると、あたりの様子がそれまでの景色とは変わり、お寺が続きます。
ここが烏山寺町。現在、さまざま宗派の26の寺院が軒を連ねます。
まさに「寺町」の名にふさわしい光景。私が気に入ったお寺をいくつか紹介していきましょう。
大木に囲まれた重厚な山門が京都風情を伝えるのが「妙寿寺」。
長い参道を進むと3階建ての木造建築が見えてきます。
この建造物は客殿で、鍋島侯爵邸の一部が移されたものだとか。木枠の薄い窓ガラスに境内の緑が映しだされ、自然の芸術を感じさせてくれます。
このお寺には関東大震災で被災した梵鐘が割れたままの状態で保管されていたり、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩を記した碑があるなど、見どころが多いです。
ところで、烏山寺町はなぜ形成されたのでしょうか。
それは1923年に発生した関東大震災で都心部にあったお寺が被災したことが要因です。
震災後の区画整理が行われ、被災したお寺が移転先に選んだのは、広い土地が入手しやすい千歳烏山でした。当時の千歳烏山は農村でしたが、甲州街道が近い立地が魅力だったようです。徐々に都心部の寺院がこの地に移って再建し、1935年には現在の寺町が形成さたようです。
寺町を歩いているとお寺の高い塀や美しい植栽が並ぶ通りに出くわします。
東京都心部ではまず遭遇できない風景ですよね。
お寺のなかに神社がある「幸龍寺」は、この街に暮らす知人が勧めてくれた場所。まずは広い境内に驚きます。
このお寺は徳川家康が浜松城主だった頃に、徳川家の祈願寺として開かれました。神社は境内に入って右側にあります。
お祀りしているのは加藤清正公と柏原大明神の2神。
こぢんまりとしたお社の建築は2神のシンボルも取り入れた意匠が細やかで、徳川家に大切にされてきた歴史を感じます。新しい年を迎えると初詣に訪れる参拝客も多いとか。
さて、江戸時代の美人画の代表的な作家といえば…誰を思いますか?
私は浮世絵師の喜多川歌麿を思います。
江戸の艶のある美人画を世に送り出し、今もなお国内外で影響力をもつ巨匠がここ寺町にあるお墓で眠っています。
場所は「専光寺」。境内に入ってまっすぐ進むと、喜多川歌麿のお墓が建っています。
私が個人的に好きだなーと感じたお寺が「源正寺」です。
このお寺にある江戸の名工、藤原正次が作った「天水桶」の美しさに惹かれてのこと。
天水桶とは防火用に雨水を貯めておく桶で、現代の生活ではあまり見られませんが、昔は寺社はもちろん、昔は家屋の屋根の上や軒先、町の一角に置かれていました。
美しい意匠が施された桶のなかでは浮草の合間をキンギョやメダカが泳ぎまわり、ボーッと眺めていると心がほっこりします。
さて最後に紹介する「高源院」は烏山寺町の一番北側にある景勝地。
弁才天を祀る朱色のお堂が建つ鴨池は目黒川の源流の1つであり、冬になるとシベリアから鴨が飛来するそうです。
訪れた時は誰もいなくて池が見渡せる橋の上は静寂に包まれ、なんだか秘密の水辺を手に入れたような気分。
ちょうど曼珠沙華が盛りの頃で、遠くにお堂が映る風景は神秘的な雰囲気を感じさせてくれました。
京都でゆっくり滞在したいけど、時間がない…という方は東京の小京都、烏山寺町へお出かけしてみませんか。
半日もあれば一帯の寺院や街並みを愉しむことができますよ。
<ご案内>
烏山寺町
東京都世田谷区北烏山2~6丁目
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