
東京国立博物館の穴場!庭園で過ごす午後
No. 443
日本文化の宝庫である東京国立博物館。
通称「トーハク」は上野公園に位置する、1872年に創設された日本最古の博物館です。
正面にそびえる本館は1938年に完成した帝冠様式(和洋折衷の建築様式)で、コンクリートの壁に瓦屋根をのせた重厚な姿は来館者を迎え入れる象徴的な存在となっています。
こちらは1909年に開館した表慶館。トーハクの敷地で最も古い建物で、大正天皇のご成婚を記念して開館しました。
この日は、本館で開催されていた現代美術作家・内藤礼さんの展覧会を鑑賞するために訪れました。
静謐で繊細なインスタレーションの余韻を抱えながら、本館の裏手に初めて足を運ぶと、そこには意外な発見が!
なんと、本館北側の裏手には静かに広がる庭園がありました。
後で知ったのですが、こちらは博物館でかつて動植物を扱っていた「天産部」の名残だとか。そのおかげで珍しい樹木や野草に出会えるそうですよ。
散策する人もまばらで、トーハクが所蔵する膨大な展示物を見て回った後にふと立ち寄ると、目と心の疲れをとってくれるかのような豊かな自然が広がっています。
ここは上野公園の喧騒から隔絶された“秘密の里山”のような空間。
園内には尾張国明眼院の書院として1742年に建てられ、その後、東京・品川への移築を経て、1933に東京国立博物館に寄贈された「応挙館」も。私が散策した時はカフェとして活用されていました。
ここには江戸時代の絵師、円山応挙(まるやま おうきょ)が描いた襖絵(現在は複製画)があるそう。
和の趣ある空間で一服できるのは特別な体験。縁側に腰を下ろして、展示の余韻を胸に、コーヒーを片手に庭を眺めながら過ごすのもよいですね。
さて、トーハクのお気に入りの景観をもう1つ紹介しましょう。
それは法隆寺宝物館から眺める景観です。
直線的でモダンな建築の窓越しに見える自然の広がりは人工と自然が響き合うような美しさを生み出しています。
エントランスの前に大胆に広がる、水盤のあるテラスの向こうに見える豊かな自然をぼんやりと眺めていると、気持ちが徐々にほぐれてくるよう。
この建造物は以前こちらの記事で紹介した「土門拳写真美術館」を設計した谷口吉生によるもの。
建築の力はすごいなと、いつもここに来ると思います。
さて、敷地内に出ていたキッチンカーでランチをいただきました。
フランス風のデザインが目を引くキッチンカーで、シードルとクレープを注文。トーハクの重厚な建築を眺めながらのランチタイムは特上のピクニックのようで、大変心地よい時間を過ごせました。
展示、建築、庭園、そして食。
1日中いても飽きないトーハクを訪れることは五感を豊かにする小旅行のよう。
ぜひ本館の裏手に広がる隠れた空間にも足を運んでみてください。
<ご案内>
東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
https://www.tnm.jp