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メインイメージ

「日本一美しい本棚」が鑑賞できる東洋文庫ミュージアム

No. 135

 JR山手線駒込駅から徒歩で約10分。
 庭園「六義園」付近にある「東洋文庫」は東洋学研究のために開設された施設。
 ここには国宝5点や重要文化財7点を含む東洋学研究の文献が約100万冊収蔵され、アジア全域の歴史・文化についての研究が行われ、蔵書は無料で閲覧できます。
 今回は東洋文庫に併設する「東洋文庫ミュージアム」を訪ねてみましょう。
エントランス

 東洋文庫の前身は1917年に三菱財閥の第3代総帥岩崎久弥(1865-1955)が1924年に設立した東洋学研究図書館。中華民国の総統府顧問を務めていたジョージ・アーネスト・モリソン氏(1862-1920)が所蔵する膨大な文献を購入したことを機に開設されました。

 2011年10月にオープンした東洋文庫ミュージアムは1階が常設展示室。ここでは東洋に関する国内外の文献の展示や東洋文庫の創設について解説されています。

 このミュージアムの目玉は常設展示室から階段を上がった2階に広がる「モリソン書庫」。ジョージ・アーネスト・モリソン氏の名前をつけたこの書庫には約24000冊もの文献が収蔵され、「日本一美しい本棚」と言われています。
モリソン書庫

 実際にモリソン書庫の前に立つと、その美しさと迫力に言葉を失ってしまいます。目の前にはソファが置かれ、その美しい本棚の世界を独り占めできます。

 天井に届くほど高さのある本棚はライトアップされ、さまざまな色の背表紙が美しく映し出され、まるでARTのよう。
図書空間

 この膨大な文献コレクションの持ち主だったジョージ・アーネスト・モリソンはオーストラリア出身で、中華民国の総統府顧問を務める前はジャーナリストとして活躍した人物。英国の新聞『Times』の海外特派員として中国に派遣され、約20年間、北京に暮らしていました。膨大な本の数々は彼が中国滞在中に収集した資料です。幸いにも創設者の岩崎氏が買い取った後も関東大震災や太平洋戦争などで消失することがなかったのは不幸中の幸いでした。

 2階ではモリソン書庫の他、定期的に企画展が開催されています。
 「回顧の道」は企画展示室をつなぐ廊下。照明が落とされているこの廊下は「クレバス・エフェクト」という手法が施され、床の下は底がないように見える仕掛けが。実際の床の深さは10cmらしいですが、ここを歩くときはちょっとドキドキ…スリル満点です。
回顧の道

 ミュージアムとレストランをつなぐのは「知恵の小径」と名付けられた通路。
 スリリングな「回顧の道」とは打って変わって陽射しと風が開放感を誘います。この通路の壁にはアジアの国々に伝わる名言がその国の言葉で刻まれています。普段見慣れない文字が並んでいますが、日本語訳も付けられているので、ぜひ1つ1つ読んでいきましょう。
知恵の小径
アジアの言葉

 通路をすすんで行くと左側には、シーボルトゆかりの植物が植えられている庭園「シーボルト・ガルテン」がひろがっています。哲学的なアジアの名言に頷きながら通路を進んでいくと、やがて「オリエント・カフェ」が現れます。
カフェ入り口

 庭園を挟んでミュージアムと向かい合っているこのカフェは隠れ家のよう。
 室内も木がふんだんに使われ、温かみを感じます。
 そんな居心地のよいオリエント・カフェではデザートやお茶を楽しめるほか、お重に入った、1日10食限定の文庫ランチ「マリーアントワネット」などの食事も。個人的にいつか食したいものです。
デザート
カフェの中

 このカフェを運営するのは数々の乳製品を世に送り出している小岩井農場。
 「東洋文庫でなぜ小岩井農場が?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
 実は小岩井農場は小野義眞(日本鉄道会社副社長 )、岩崎彌之助(三菱社社長)、井上勝(鉄道庁長官)の3人の頭文字をとって「小岩井」と名付けられました。東洋文庫創設者の岩崎久弥氏は彌之助の甥にあたり、1899 年から小岩井農場の場主を務めていました。
カフェの外

 オリエント・カフェを後に向かったのはミュージアムショップ「マルコ・ポーロ」。
ミュージアムショップ

 ここでは過去の企画展図録をはじめ、しおりやバッグといったオリジナルグッズが販売されています。また、お茶やお菓子、ハワイのバスソルトやネイルオイルといったコスメ類も並んでいたのにはビックリ。これは過去に開催した企画展の関連グッズなのだとか。
ミュージアムグッズ

 ミュージアムショップの脇では「ムセイオンの泉」が静かな水面をたたえています。
 ムセイオンとはミュージアムの語源となっている言葉だそうです。
ムセイオンの泉

 「日本一美しい本棚」といわれるモリソン書庫だけでなく、東洋文庫ミュージアムにはいろいろと見どころもあり、「東洋文庫」というちょっとかた苦しい言葉のイメージを払拭してくれるようです。遊び心いっぱいの東洋文庫ミュージアムへ出かけてみませんか。

○ご案内
東洋文庫ミュージアム
東京都文京区本駒込2-28-21
HP http://www.toyo-bunko.or.jp

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