
江戸時代の雛人形に会える!秋の小京都竹原
No. 428
広島県竹原市の「街並み保存地区」は時を遡った気分に浸れる、古き良き日本の風情が息づく地。
この町は江戸時代から明治時代にかけて塩田で栄えた歴史を刻んでいます。
現在も残る古い町並みはどこか懐かしく、心落ち着く雰囲気を漂わせています。
この地区で毎年開催される「飾り雛」のイベントは春の訪れを告げる風物詩。
毎年2月上旬から3月下旬にかけて、旧家が大切に守ってきた江戸時代以降の雛人形をはじめ、町内の家々や店舗に飾られていた約200組の飾り雛で彩られます。
町全体が雛人形をモチーフにした、1つのインスタレーション作品となります。地図を片手にさまざまな雛人形を巡って散策するのも良いでしょう。
こちらは胡堂を訪れた際、偶然、近くの建物の中に飾られていたのを見つけた雛人形。
思わず息を呑む美しさに包まれました。
作られた年代によって、衣装や顔つきが異なるので、その違いも楽しめます。
雛人形のルーツは古代の土偶や埴輪にまで遡ります。
これらは人々の代わりに災厄を請け負うという意味合いを持っていました。
「ひとがた」とか「かたしろ」という言葉をご存知でしょうか。
陰陽師 が祈祷 する時、人間の身代わりとしたのが紙で作られた人形のことですが、実はひな人形もこの一種だったそうです。
平安時代に宮中では「ひいな遊び」と呼ばれる人形遊びが流行し、これが現在のひな祭りのルーツといわれます。やがて江戸時代には、庶民の間でもひな祭りが行われるようになり、雛人形も発展していきました。
江戸中期には大奥でも雛飾りが流行し、江戸には「雛市」が立つほど賑わったそうです。
それに伴い、豪華絢爛な雛人形が作られるようになり、江戸から地方へと広がっていきました。あまりにも豪華になっていく人形に歯止めをかけるため、幕府はひな人形の華美を禁じるおふれを出したこともあるそうです。
1年に1度、人形たちのお披露目会ともいえる飾り雛。
古くから、その家に生まれた子どもたちの健やかな成長や家族の幸せを願う思いが込められてきたのでしょう。
また、飾り雛を見学する際はぜひ、竹原の郷土料理も味わってほしいものです。
竹原は塩田で栄えた歴史があります。
塩田の持ち主である浜旦那たちは塩田で豊かな富を築き、それを資本に竹原の文化に貢献してきました。
その浜旦那たちがおもてなし料理として好んでいたのが「魚飯(ぎょはん)」です。
これは焼いた白身魚の身をほぐしたものと美しい色彩の具材をご飯の上に盛り付け、白身魚の骨からとっただし汁をかけて食べる料理です。
1960年に塩田が廃止になったことに伴い、魚飯の存在は薄れてきましたが、近年、昔の新聞記事を元に再現されました。竹原市内ではいくつかのお店でいただくことができます。
町並み保存地区で開催される飾り雛のイベント期間中、会場の1つ旧笠井邸では「雛めぐりライブ」や「津軽三味線ワークショップ」などが行われます。
また、町並み保存地区にあるレストランやカフェの一部では期間限定で雛めぐりのランチを提供するほか、週末のみ、老舗の酒蔵では甘酒をいただけます(有料)。
ご興味のある方はぜひ、下記のサイトをチェックしてください。
音楽と雛人形が織りなす雅な光景は、時間を越えて心に残り、訪れた人々にとって忘れられない思い出となることでしょう。
<ご案内>
第19回 たけはら町並み雛めぐり
広島県竹原市本町3丁目
2025年2月8日(土)~2025年3月20日(木・祝)
https://www.takeharakankou.jp/event/9528