壮大な山水画の世界に身を委ねるタムコックの旅

ハノイから郊外の観光地へ日帰りで出かけるなら、海上の奇岩群が有名なハロン湾か水と緑が豊かな景勝地であるニンビン、チャンアンあたりでしょうか。

ハノイ滞在中に友人と日帰りバスツアーでどこかに行こうという話になり、その結果、タムコックへ行くことになりました。タムコックは「陸のハロン湾」といわれ、個人的に桃源郷のような場所だと思っています。


「ホアルー、タムコック 、ムア洞窟」を巡る日帰りツアーを予約して、私たちは早朝にハノイを出発。窓の外を流れる田園風景を眺めていると、目的地への期待が高まります。

ハノイからのバスツアーはおよそ2時間半から3時間でホアルーへ。　

ホアルーはベトナムの最初の首都で、古代ベトナムの初代皇帝と二代皇帝であるディン王とローク王のために 17 世紀に建てられた寺院に参拝します。

昼食は大きなレストランのビュッフェ。
好きなものを好きなだけ取っていきます。

昼食の後、タムコックへ。
実は13年ぶりの再訪です。
今、どのような姿を見せてくれるのでしょうか。

少しだけ繁華な空気が漂うタムコックの町は以前の記憶と比べて明らかに観光地化が進んでいました。土産物店やレストランが増え、活気にあふれ、乗船チケットもQRコードを読み取るなど、最新の技術が採用されています。ピッという機械音はタムコックには似合わない気もしますが、多くの観光客をスムースに乗船させるには便利ですね。

景勝地のタムコックは石灰岩の奇岩が織りなす独特の景観が圧巻。
山水画の世界を思わせる川をボートに乗って巡っていきます。

ライフベストを着用後、ボートに乗り込み、いよいよタムコックのハイライトである川下りへと出発します。船頭さんがゆっくりと漕ぎ出すと、私の友人を乗せた舟は静かな水面を進んでいきます。

ところで、タムコックの船頭さんたちはボートを足で漕ぎます。その器用な足さばきには感嘆。ここでボートこぎのアルバイトをしたら、脚やせが期待できるかも。

長い年月をかけて自然が創り上げた奇岩群が川に連なる様子は偉大な芸術作品。
初めて訪れた時はツアー客も少なく、静かな農村地帯であったこの場所も、その美しさが広く知られるようになったのか、国内外から多くの観光客が訪れるようになりました。

しかし、目に飛び込んできた景色は、あの頃と変わらない雄大さ。
切り立つ奇岩の間を縫うように流れる川、その両岸に広がる田園。自然が作り出した壮大なパノラマは、時を超えても同じ。懐かしさで胸がいっぱいになりました。

両手を広げたくなるような開放感の中、目の前に迫る奇岩の迫力に息をのみました。水面に映る空と岩のコントラスト、川沿いの夥しい緑。相変わらず、言葉を失うほどでした。


後部座席に乗った友人も私もしばらくの間、無言。
自然との対話！？でしょうか。
けれど、お互いに何かを感じとっているのがわかりました。
人間のセンサーですね。

ボートは自然が作り出したトンネルをいくつかくぐり抜けていきます。
これもタムコックの醍醐味。

暗闇のなか、頭上すれすれに迫る岩肌からしたたる水音、行き交うボートに乗った人たちの声が響き、異世界へと誘います。スリリングな洞窟のなかでは動画の撮影に夢中になり、写真が撮れませんでした。

トンネルを抜けるたびに新たな景色が広がり、その変化に心が躍るボートツアーの所要時間は約2時間。
下船する頃、ここに再び来れて良かったという感謝で胸がいっぱいになり、必ずまたここに帰って来ようと決意を新たにしました。

13年の歳月はタムコック周辺の風景を変えましたが、自然の美しさは、決して色あせることはありませんでした。

ところで、こちらはボートツアーの後に登ったムア洞窟の頂上から眺めたタムコックの風景。

ボートがまるで米粒のよう。
さっきまで私はあの場所にいたのだ…と思うと、なんと自分がちっぽけな存在で、悩みなんか取るに足りないものだと感じてしまいました。

ハノイからタムコックのボートクルーズを体験するなら、手軽で効率のよいガイド付きのツアーがおすすめです。ネットで予約できるし、初めてベトナムを訪れる方や時間に制限のある方には手軽で便利です。
私たちは現地に到着してネットで予約。利用したツアーは昼食付き1人約6,000円（2025年5月現在）でした。

また時間の制限がなく、自分のペースで観光したいならハノイからニンビンまで鉄道を利用するのも良いでしょう。
ニンビン駅からタムコックまではタクシーで移動できます（所要時間約15〜20分）。タムコックではアトホームなゲストハウスをいくつか見かけましたよ。

タムコックはダイナミックなハロン湾より規模は小さいですが、川と奇岩と田園風景に心癒され、頭に溜まった不要なものごとを放電できるはずです。

-春